湛水のり面緑化工

水質と耐洗掘性に配慮した貯水池基盤造成

ダム変動水域ののり面を対象として、水没に伴う不安定要因(波浪・洗掘などの物理的障害、表土の流失)の解消と景観や水質環境などを改善するために、ダム湖の立地条件に応じた湖岸植生環境を安定させることを目的に「湛水のり面専用の植生基材吹付工」を開発しました。

植物は流域圏の生態に配慮した種苗を増殖し、これを還元するように配慮しています。植生基盤の材質は、富栄養化を回避する改良土壌を用い、これに植物繊維などを補強材として用います。これらの材料を吹付方式により生育基盤を造成します。

施行事例は筑後川水系の松原ダム、球魔川水系の川辺川ダム、菊池川水系の竜門ダム、および山口県の県営阿惣ダムにあり、順調な生育で推移しています。

該当するダムの管理条件によって植生や生育基盤の環境が定まりますが、植物の生育旺盛な春から夏の時期に満水位に近い水位管理であれば、湛水域の植生はあまり期待できないことがあります。一方で、水の透明度によって植物の生息範囲が制限され、一般的には透明度の2倍の水深まで植生成立が可能とされています。これはダム本体の上流の地形・地質の要因がかかわり、また、富栄養化については上流域に栄養源の影響を受けています。

応用展開として、溜池やコンクリート護岸水路に対しても可能であり、適用する自生種の増殖を図り、多種多様性をもつ植生を緑化目標に設定するようにしています。

湛水のり面緑化工の特徴

  1. 基本的に現地発生土・植物発生材などのリサイクル材を用います。
  2. 吹付手法により行い法面と一体化し、基盤自身に透水性と保水性を保持させた構造で浮力や洗堀の障害を防止します。
  3. 植物の選定は、先駆草種として水生植物の「ミズアカネ」とともに遷移安定種として河川流域圏の植物を共存させるように配置します。
  4. 自然度の高い潜在表土や自生種種子、栄養体を混合し吹付けることにより、さらに多様性のある植物群落が成立します。
  5. レベル高さ1~2m間隔に貯水梁状の棚田構造を形成し、河川植生の河床土や河川植生の種子・栄養体を配置します。

このページの先頭へ